新型コロナウイルス感染拡大にともなって体温計の売り切れが続いています。お店に入るときなどおでこに向けて非接触体温計で計られることが多いですね。あれ、便利なので一つ欲しいなと思いましたが、これまうっていない。通販で見かけるのは違法販売としか思えないものばかり….
体温計は医療機器
医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器等について品質や安全性の確保に関して定義した法律があります。
通称、薬機法といいます。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=335AC0000000145
この中で第二条4項において、
この法律で「医療用具」とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。
と定められています。
そして政令は同じく以下のようなもので、通称、薬機法施行令といいます。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81005000&dataType=0&pageNo=1
この中にある「別表第一」を見ると….
十六 体温計
…とあります。
体温計は厳密に言うと、薬機法および薬機法施行令で医療機器と定義されています。
ちなみに、一般の電子体温計については、薬機法とは別にJIS T 1140:2014で規格が定めらています。
正規の非接触体温計のお値段
さて、問題の非接触体温計。
ちゃんとしたお名前がありまして「皮膚赤外線体温計」といいます。
これもちゃんと規格があるのですが、まあ、とにかく正規に医療機関で用いられている医療器具としての体温計はそういう法律や規格でがんじがらめです。
お安いところではこんなのがありました。
販売名:イージーテム (原沢製薬工業)
一般的名称:皮膚赤外線体温計
分類:管理医療機器(クラスII)
医療機器認証番号:224AIBZX00071000
参考価格 28,800円(税込)
そうなんです。
ちゃんとした医療機関で医療器具として使える皮膚赤外線体温計は3万円前後します。
非接触でなく普通の電子体温計であれば、たとえばオムロンのオムロン 電子体温計 MC-687は、医療機器認証番号 229AGBZX00037000 で管理医療機器としての認証を受けています。
それでお値段3,000円台です。
ネットで売ってる安いやつ
では、ネット通販に売っている4,000円でお釣りがくるような「非接触体温計」は?
基本的に輸入品でしかありえないです。
厳密に言うなら、あれは「放射赤外線温度計」ではありますが、「体温計」と銘打って販売すると薬機法に抵触する可能性があります。
もちろん、医師や看護師が診断・治療の手段の一つとして、そういうのを常用するとこれはもう違反の疑いは逃れられないでしょう。
そもそも体温計として売ること自身が違法性が高くなります。
仮に放射赤外線温度計だとしてもまともなものは数万円ほどは間違いなくします。
それが4,000円とかで買えるわけがないじゃないですか。
ああしたものを販売している業者の中には良心的なところも多くあって、「本品は体温計ではありませんので体温を測定することはできません」と注意書きを出しています。
でも、全く同じものを別のショップでは「体温計」として売っています。
そういうショップは他の商品説明もいい加減だと思って間違いないと思いますので、ご用心、ご用心。
そして、レビューを見ると「あまりにも普通の体温計と測定結果が違いすぎるとか、説明どおりに計ったけど33度くらいしか表示しないとか…..。33度って生きてられないっすよ!
体温計ではありませんので、スクリーニングに使う程度にして下さいなんて書いているサイトもありますが、いやいや、本来38度あって入館できないのが、35度5分としか表示されないならスクリーニングにすら使えません。
まとめ
体温計と一口にいうけど「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と政令により体温計は医療機器とされている。
JIS規格にも規格定義がある。
非接触体温計(「皮膚赤外線体温計」)で医療機器認定を受けているものは3万円ほどする。
安いものは輸入品で法律に即したものではなく体温計とはいえない。それを体温計として売ることは法律違反の可能性あり。
自宅・自分用に使うのは勝手ですが、それで熱がないからといって安心するのは禁物、ちゃんと医療機器認証を受けた体温計を使いましょう。