自宅に防音室がある人は別にして、バイオリンを習っている・演奏する人にとって悩みの種が音の大きさです。どうやったら近所迷惑にならないかな?と悩むわけです。この記事では自宅でも気兼ねなく練習できるように開発されたYAHAMA サイレントバイオリン、通常のアコスティック・バイオリンとそれにミュート(弱音器)をつけた場合の音の大きさを数字で比較します。
今回から新たに「バイオリン」カテゴリを設置しました。
初心者の上の「超」がつく筆者ですが、プロの指導者やバイオリニストの方は習い始めた大昔に悩んだことで、今は何も考えずにできてしまうことが、初心者にはどうがんばってもできないとかなかなかうまく行かないことがあるのは当然。しかし、それについて指導者の方はついつい難しく指導してしまいがち。
そんなときには、初心者がそれを克服した・克服しつつあるときの体験が(他の分野での)経験上非常に有効です。
そんな思いを持ったカテゴリです。
ですから、指導者の方、経験豊かな方には無縁のカテゴリとなるでしょう。
バイオリンの音の大きさ比較について
WebやYouTubeにはバイオリンの音の大きさを比較した記事や動画が沢山あります。
文字の記事では、アナログ的に言葉表現のものがほとんどで、なんとなくイメージはできますが数字化されていないのでどれほどのものかわかりにくいというのがあります。
例えば「ゴム製ミュート」は「金属ミュート」より弱音効果が高いとよく書かれています。そんなのはわかりきった話ですが、どれくらいなのか、金属ミュートとサイレントバイオリンはどちらが音が小さいのか?と悩んでしまいますよね。
この記事では、iPhoneの騒音計アプリを使ってそれらの音の大きさを数字で示します。
当然スマホアプリですので、本物の騒音計のような絶対的な騒音数値(dB)ではありません、あくまで相対的な数字です。
ゴム製ミュートと金属ミュート比較動画
最初にYouTubeで見つけた音の大きさ比較動画を紹介します。
最初は島村楽器川崎ルフロン店の五十川聡氏の動画です。
この方の動画は説明が非常にわかりやすく、ナレーションの音の大きさも手頃で聞きやすいのでおすすめです。
この中で、ゴム製ミュートと金属製ミュートの比較に注目してください。
また、駒に巻きつけるタイプのミュートは明らかに音質が激変しているのがわかると思います。
アコースティックバイオリンとサイレントバイオリン比較動画
次はヤマハのサイレントバイオリン「YSV104」記者発表会で、アコースティックバイオリン(生)と金属ミュートをつけた場合、そしてサイレントバイオリンの裸の音の比較です。
いろいろ比較動画はあるのですが、これが結構わかりやすいです。
金属ミュートが途中でずれて音が変になるシーンがありますが金属ミュートの欠点の一つですね。
比較に使った素材
サイレントバイオリン
ヤマハ サイレントバイオリン YSV104です。冒頭の写真左側のものです。
バイオリンの音の大きさは元の振動が駒を通じて胴につたわり、胴が振動して大きな音となる仕組みです。
サイレントバイオリンはその胴がありません。(上のヤマハの商品紹介サイトを御覧ください)
駒にピックアップが仕込まれていて振動を電気信号に変えて、付属のコントローラーで増幅・加工されて普通のバイオリンの音のように聞こえる仕組みです。したがって、ヘッドホンかアンプを使わない限り聞こえてくるのは弦が振動して出る小さな音だけとなります。当然、生音には胴で響いてふくよかな音になるようなことはなく、貧弱で痩せた音です。これをコントローラーが加工してアコースティックバイオリンのように聞かせるわけです。
下の動画はAmadeus Electric Quartetという主にヤマハのサイレントシリーズを使っている弦楽四重奏のカルテットです。
使われているサイレントバイオリンは筆者のYSV104の上位機種であるSV250というものです。
もちろん後にエフェクタとか通しているわけですが、それでも綺麗な音!
アコースティックバイオリン
使用したアコースティックバイオリンはこちら。
クライスラーミュージックの「【米国Cao工房】017E バイオリン セット(の優秀個体)」です。
金属ミュート(ハイブリッドミュート)
使用した金属ミュートは、金属をゴムでカバーしたものです。
ハイブリッドミュートという場合もあるようです。
・あたりがゴムなのでズレにくい
・金属ミュートなので弱音効果は高い
・万が一のときもゴムでカバーしているので多少なりとも楽器へのダメージが少ない
バイオリン・ビオラ用消音器 Artino アルティノ プラクティスミュート APM-01
ゴム製ミュート
使ったゴム製ミュートはこれ。
VOARGE バイオリンミュート 消音器 弱音器 サイレント 4本爪 ゴム製 適用 サイズ 4/4 軽量 小型 夜間でも練習対応可能 持ち運び便利(ブラック)
まあ、よくある普通のゴム製ミュートです。
Amazonで買うと1,000円で十分お釣りが来ます。
測定環境
アコースティックバイオリンは、教室の防音室を練習で借りたときにiPhoneアプリをつかって約1mの距離で測りました。
サイレントバイオリンのほうは、自宅でテレビなどをつけていないときに同じアプリで約1mの距離で測定です。
実比較データ
いよいよ実比較データです。
テストではG/D/A/Eを開放弦で強めに弾き、一番低いG線のソ(開放)からE線のシ(4番の指)まで順に音階を弾きました。
何もしてない状態
防音室でエアコンの音だけがしている状態。
最小5(dB)、平均11、最大でも16です。
筆者はただなにもせずになっている状態。、
ミュートなしのアコースティックバイオリン
でかい!です。
これが生バイオリンです。dBとしての信頼度はともかく100を超えています。
これは間違いなく騒音苦情レベルです。
ゴム製ミュート
次はゴム製ミュート。
耳のそばで鳴っているのでバカでかいことにかわりないですが、それでも生よりは相当小さくなります。
ですが、最大で80を超えているので、明らかに騒音レベルです。
これでは普通の家屋(一戸建てやマンション)では相当遠慮して小さめに弾かないと無理です。
金属ミュート(ハイブリッドミュート)
そしてハイブリッドミュート。
金属をゴムでカバーしているのでずれたりしません。
これなら問題ないレベルです。
ゴム製ミュートと比べると雲泥の差です。
筆者は深夜を除けばこれで自宅練習しています。
我が家とお隣さんが窓を開放していると、お隣さんとかに音はわずかに聞こえるかもしれませんが、騒音になるレベルとは遠いです。
窓を閉めれば無問題レベル。
家族で夕食時にちょっとおしゃべりしているときがこんな感じに近いです。
サイレントバイオリン(YSV104)
そしてサイレントバイオリンの生音。
防音室でなにもしてないエアコンの音だけが聞こえている状態と、ハイブリッドミュートを使った場合の中間です。
実際、耳で聞いてもそんな感じです。
隣のテレビの音が丸聞こえのような安普請環境ではなく、しっかりした気密性の高いマンションでは夜でも全く問題なしでしょう。
これが問題になるようなら、多分日常正確音も問題になるレベルです。
試してみると、この数字が出てくるの近いのはテレビで天気予報をつけて家族で静かめの会話をしているときです。
まとめ
自宅で練習するならアコースティックバイオリン+金属をゴムで覆ったハイブリッドミュート、あるいはヤマハ サイレントバイオリンがおすすめである。
ゴム製ミュートはたしかに生バイオリンよりは音が小さくなるが、自宅で練習するにはちと無理がある音量である
音の大きさとしては、生バイオリン > ゴム製ミュート >> ハイブリッドミュート > サイレントバイオリン となる。
自宅で普通に練習できる音量はハイブリッドミュートを使うかサイレントバイオリン(ヤマハ YSV104)である。ゴム製ミュートや生バイオリンは普通の家では無理。