壮大なSF大河ドラマ「三体」、中国版「三体」とNetflix版「三体」

壮大なSF大河ドラマ「三体」、中国版「三体」とNetflix版「三体」

中国のSF作家「劉慈欣」が書いた長編SF小説「三体」は、中国国内でドラマ化され、その後日本でもWOWOWで放送されました。一方アメリカのNetflixもドラマ化し現在は第1シーズンが配信されています。どちらも同じ原作に基づきますが、テイストがずいぶん違います。この際だから中国制作版・Netflex版両方とも見ちゃいましょう!

「三体問題」

三体問題の前に小説「三体」についてWikipediaの説明を引用します。

『三体』(さんたい)は、中華人民共和国のSF作家劉慈欣による長編SF小説。2006年5月から12月まで、中国のSF雑誌『科幻世界(中国語版)』で連載され、2008年1月に重慶出版社によって単行本が出版された。

出典:Wikipedia「三体」https://ja.wikipedia.org/wiki/三体

この「三体」という言葉はイメージ的に中国由来の何かのように思えますが実際には全く違います。

ニュートンの万有引力(相互間距離の二乗に反比例する強さで互いに引き合う力)の法則に従って動く三つ物体の運動を計算して解こうという古くからある問題です。

太陽と地球、地球と月のような二体に関しては、ケプラーの法則としてニュートン力学以前に解明されていますが、三体以上のN体問題になると一般解はないとされています。

太陽のような大きな質量の天体が相互に引力を十分及ぼしうる範囲に三つあると、それらの三つの動きは計算で求める事ができず、いかにも適当にランダムに動いているようなカオスの状態になるそうであります。

「三体」

こういうカオスの世界に星が存在するのが「三体」の大きな背景。

その星ではある時は太陽が三つ見えて高温になり地表がマグマでドロドロになり、ある時は太陽が全く現れず絶対零度が続いたりする世界です。

そんな世界で知的生命体とその文明が存続し発達するのは科学的に不可能だと思うのですがそこが小説。

科学的にはあり得ないはずですが、とにかくその星には知的生命体が存在して、極寒や灼熱を独自の方法で生きながらえて文明は繁栄と滅亡を繰り返します。

そしてついにその星の住民(三体人)の技術が恒星間航行ができるまでに発達します。この過酷な世界を脱出しようとし、移住先として安定した環境の地球の存在を知り地球への入植を試みる三体人。これがドラマの根底にある大きな流れです。

普通に考えればここで宇宙戦争なのですが、三体人の地球襲来までなんと400年もかかることがわかります。一方、三体人は400年の間に地球の科学が進化して三体人をはるかに上回ることを危惧しています。

そこで量子の中にAI搭載のめちゃ高機能なコンピュータを埋め込み、量子もつれにより距離を超越してリアルタイムで連動する2組の量子をつくり、片方を地球に送り込みもう片方を三体人の手元に残してリモコンのように操作し、地球の科学の発展を徹底的に妨害しようとします。

ここでは超弦理論というものが登場し、量子の中に高次元が閉じ込められていて、そこにはとんでもない情報量を埋め込むことができ、それが超高性能コンピューターとして、地球人のありとあらゆる活動をスパイし、事象を操り物理学などの重要な学問を成り立たせなくする、というのがポイント。

高次元はそれより低次元を無限に含むことができるというのがポイント。人間が認識できる3次元(縦・横・高さ)からなる世界の中には2次元(縦横だけの平面)を無限に含んでおり、平面である2次元には1次元(点あるいは線)を無限に含むことができる。時間を含めた4次元の中にはある時刻の一瞬で切り取られた3次元が無限に含まれる。超弦理論では11次元空間となり、人間の住む3次元の空間は無限に存在しうる。



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中国国内制作ドラマ「三体」

原作(早川書房から出ています)への忠実度が高いというのが世評のようです。ドラマ「三体」は三部作の第1部を映像化しています。

「三体」の前半で重要な要素がその名も「三体」というVRゲームです。

中国制作ドラマでは、今現実に存在する技術の延長の道具で、VRゲームの中のシーンも今の3Dゲームの映像のような感じになっていまして、VFXバリバリではありません。

全体の流れとしてSFドラマというよりは、文化大革命時代の中国のシーンを織り交ぜながら、サスペンスドラマのような感じから後半はグイグイとSFの世界に入ってゆきます。前半は流れがゆっくりで、セリフはほぼ全て中国語なのでテンポの速い子守唄に聞こえてしまいウトウトってことも数知れずでした。

最初は「ん?」という感じですが、頑張って見ているうちにグイグイ引き込まれてしまい、もう寝なくっちゃ状態に突入です。

そして原作第1部の終了に従ってドラマも終了します。

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Netflix版ドラマ「三体」

構想では全4シーズン。現在はシーズン1(とは明記されていない)の第1話から第8話までが配信されており、1話あたり60分程度の長さです。

中国制作版と違うと思われるのはカバーしているストーリーの長さの範囲。中国制作版は原作第1部まですが、Netflix版は原作第1作目は超高速フルカバーで、2作目と3作目はつまみ食い状態のようです。原作第1作目の話は第5話くらいまでで、あと3話が2作目と3作目のエッセンスのようです。

原作2作目と3作目のエッセンスを取り入れているため、なんならこのまま打ち切られてもとりあえずOKかしら?的な終盤になっています。これでシーズン2を作るとなるとどうするのだろう?と疑問を感じますが、原作のストーリーを傍に置けば、まだまだ先が楽しみなのは間違いないです。

あいにく現時点ではシーズン2の制作が正式には決まっていないようです。シーズンが当初構想とは違って完結しないまま制作打ち切りになるのはNetflix制作ドラマあるあるですので先行き心配。

両方みた感想

中国制作版ドラマ「三体」がサスペンスドラマのような走り出しで少しずつ秘密が明かされてゆき、見る人を置いてけぼりにはしません。

一方Netflix版ドラマ「三体」はせっかちなアメリカ人?を意識してなのか、とにかく進行が早い。そもそも「三体問題」の理屈すらよくわからないままどんどん進んでいきますので、筆者も第8話まで見終えたときには頭の中に「?」だらけで、2回目で見直したときにようやく理解した次第。

またVFX大活躍で、VRゲームのヘッドセットも中国版のように今あるものの延長ではなく、今は存在すらしない完璧なSFものになっています。文化革命時代の中国の描写以外はほぼSF映画。

主人公は中国版ドラマではナノテク素材研究者の汪淼(ワン・ミャオ)ですが、Netflix版では舞台はイギリスのオックスフォードとなり、原作第2部と第3部に出てくる主人公が同じ時空で「オックスフォード・ファイブ」として活躍します。

ドラマ化するにあたり現代SF風にドラスティックに人物などを置き換えて、話を圧縮しわかりやすくしたのがNetflix版。大河ドラマのようにじっくりと人物を描くのが中国制作版。

両方みて確かに基本は同じストーリーなんですが、別々のドラマとしても楽しめました。

Netflixを見た人にはhuluなどで中国制作版を見ていただきたいし、逆に中国制作版を見た人にはNetflex版も見て欲しいと思います。




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