Webメディアの記事等にバッテリー劣化を少しでも防いで長持ちさせる使い方を紹介している記事が時々出てきます。それはそれで良いと思いますが、筆者はあえて「バッテリー劣化をチマチマ気するよりバンバン使ったほうが幸せだ!」と思います。もちろん安全な使い方をした上での話です。
劣化防止以前に安全な使い方をするのが大事
避けるべき使い方
リチウムイオン電池はエネルギー密度が非常に高いバッテリーであり、扱い方を間違えると発煙・発火の危険があるのはよく知られていると思います。
バッテリー劣化を少しでも防ぐためのチマチマとした小技の必要は筆者は全く感じませんが、安全な使い方をすることは絶対条件であり、それが結果的にバッテリー寿命を不用意に縮めるリスクを減らす効果もありますのでこちらのほうは大変重要です。
https://www.baj.or.jp/battery/safety/safety16.html
スマートフォンの場合は以下のような使い方は安全のために避けねばなりません。
- 車のダッシュボードや夏の車内、直射日光のあたる夏の室内窓際など高温になる場所での保管は絶対ダメ。これらは発煙・発火事故につながります。リチウムイオン電池の動作環境の基準は25℃設定されています。真夏の直射日光のあたる車のダッシュボードは80℃にもなります。 [JAF] 真夏の車内温度(JAFユーザーテスト)
https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/temperature/summer
- 充電ケーブルを繋いでCPU負荷の高いゲームはしない。CPUからの発熱と充電時の発熱でバッテリーの温度が上昇し、寿命を縮めるのはもとよりバッテリーが加熱する危険があります。ただし「まともな」スマートフォンであれば、温度上昇を検知してCPU速度を落とすのでゲームはカクカクするかもしれませんが、普通は大事故にはならないでしょう、バッテリーのダメージはあると思いますが。いずれにせよ安全のためにはすべきでありません。
- 絶対に衝撃を与えないリチウムイオン電池に強い衝撃が加わることで、内部構造にダメージを与えショートして発熱・発火するとか、バッテリー内部にある保護回路が破損してしまう可能性がある。強い衝撃で筐体が変形したような場合は、内部バッテリーも損傷を受けている可能性があり、直ちに修理するか廃棄すべきだと思いますが、応じてくれるメーカーがあるかどうかは知りません。
- 膨らんできたら即修理、修理できなければ即廃棄内部でガスが発生しリチウムイオン(リチウムポリマー)の外装が膨らんできたということであり、放置は事故につながります。ただちに使用を中止してメーカーの正規修理に出しましょう。修理の道がなければ即廃棄です。もったいないより安全優先。もし修理の道がないようなメーカーであれば使用医不能なスマートフォンを回収してくれるかどうかも極めて疑問です。
- 長期保管するものは満充電しない常時使用するスマートフォンは利便性と災害発生時への対応のために100%に近い状態のほうが望ましいと思います。しかし、長期保管する予備スマホなどは80%程度で置いておくのがいいでしょう。リチウムイオン電池は定格電圧3.7V、満充電状態で約4.2Vとされておりますが、何かの不都合があって過剰充電されてしまい4.3Vとか4.4Vになると発熱や発火の原因になります。ちなみにリチウムイオン電池は完全放電してしまうとアウトになりますので保管中は50〜80%の残量を維持すべきです。
バッテリー劣化を防ぐ小技は使わない
安全に直接関わらないようなバッテリー劣化を防ぐ小技については本記事では触れません。筆者はそうしたバッテリー劣化を防ぐ小技はほとんど実行していません。そんなことよりも、自分がいつでも快適に使うほうがはるかに重要だと考えています。
小技を導入しない第一の理由は単純に面倒くさいからです。不精なものですからこまごまとあれこれ気を使うのが嫌いです。第二の理由はバッテリー劣化を気にせず使い倒したほうがスマートフォンの能力を発揮できるから。第三の理由は日常使うスマートフォンはできるだけ100%に近い残量でキープしたほうが万一の災害時に役に立つからです。
ガンガン使うにはメーカーを選べ!
といっても、どんなスマートフォンでもガンガン使えばよいわけではありません。
条件:メーカー正規保守でバッテリー交換が比較的安価でなおかつ容易であること。
[参考にお読みいただきたい記事]iPhoneのバッテリーについてー劣化なんざ気にせずガンガン使おう!
これらをご覧いただくと、SIMフリー限定ではありますがバッテリー交換で安心できるのはiPhoneとGoogle Pixelくらいしかありません。SIMフリー以外はキャリアが絡んできますので話がややこしいし時間も手間もかかります。ショップによっては下手すれば新しい機種を売りつけられたりしかねない。
メーカー認定正規修理窓口以外でのバッテリー交換は、そもそも使われるパーツ(バッテリー)が正規品かどうかわかりませんし、交換手順もメーカーのサービス手順通りとは限りません。最悪は交換したバッテリー不良や手順の誤りで発煙・発火・爆発事故のリスクも高くなります。
筆者は某メーカー(スマートフォンではありません)の保守企画部門での仕事経験もありますが、意味なく保守手順が決められているわけではありません。お客様と保守に従事する技術者の安全を守り、製品の品質を維持できるように、ネジ一つとっても外す順序やつける順序がきめられており、配線の引き回しなども厳密に決められています。これらを守らないことで事故につながることも実際に存在します。とりあえず動けば良いのではないのです。
どのメーカーのスマートフォンであれバッテリー交換はメーカー認定正規修理窓口以外に依頼してはいけません。最悪の最悪は自分の身が危険なだけではなく、他人の身体や生命・財産に危険を及ぼすリスクも高くなります。
万一の事故の際、メーカー正規修理であれば結果はどうあれメーカーが表に立つことになりますが、街の修理屋に出した瞬間に、製品そのものによほどの瑕疵が無い限りメーカーはには責任はありませんので、正規修理に出さなかったユーザーの責任だというでしょう。街の修理屋に多額の賠償能力があるとも思えません。ばっくられるのがオチでしょう。そして被害者は泣き寝入り。最悪は他人への賠償で自己破産。
まとめ
スマートフォン(バッテリー)を安全に使うことで結果的にバッテリーの寿命を縮めるリスクが減る。
安全面以外のバッテリー延命小技を否定しないが、そんな細々したことに気を遣うより、ガンガン使って劣化したらメーカー正規修理窓口でバッテリー交換した方が結果的に、幸せに長く使える。
バッテリー交換は何があっても絶対にメーカーの正規修理窓口へ依頼すること。街の修理屋でのバッテリー交換はパーツの出所や手順や技術が全く不明であり、事故のリスクが高くなる。絶対に街の修理屋でバッテリー交換をしてはいけません。