iPhoneで本格動画を撮る場合、無印やPlusではなくProやPro Maxが適しています。ProやPro Maxで威力を発揮する本格動画アプリも何種類かありますが、その中で内蔵カメラアプリを含めて筆者が使ってみた5種類について、機能の違いなどをサクッと説明します。
5種類の本格動画アプリ
内蔵カメラアプリを本格動画アプリと言っていいかどうかは微妙ですが、Apple ProRes 422 HQで撮れることから仲間に入れてあげました。
・Final Cut Camera
・MAVIS
・ProCamera
・Blackmagic Camera
有償・無償とりまえぜて有名どころを取り上げました。
内蔵カメラアプリとFinal Cut CameraはApple純正で、それ以外はサードパーティ製です。中でも話題になることが多いのはBlackmagic Cameraです。映像機器メーカーであるBlackmagic Design社がなんと「無料」でリリースしたハイエンド動画撮影アプリです。
ざっくりと機能の違いを表にしてみました。
内蔵カメラアプリ | Final Cut Camera | MAVIS | ProCamera | Blackmagic Camera | ||
---|---|---|---|---|---|---|
販売元 | Apple | Apple | Mavis Broadcast Ltd | Cocologics GmbH | Blackmagic Design Inc | |
料金 | 無料 | 無料 | 900円 | 1,500円〜 | 無料 | |
フォーマット | ||||||
H.264 | ○ | X | ○ | ○ | ○ | |
HEVC (H.265) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
Apple ProRes 422 HQ | ○ | ○ | X | ○ | ○ | |
Apple ProRes 422 | X | X | X | ○ | ○ | |
Apple ProRes 422 LT | X | X | X | ○ | ○ | |
Apple ProRes 422 Proxy | X | X | X | ○ | ○ | |
ログ撮影 | ||||||
H.264 | X | X | X | X | ○ | |
HEVC (H.265) | X | X | X | X | ○ | |
Apple ProRes | ○(外部SSD必須) | ○ | X | ○ | ○ | |
撮影プレビューでのLUT適用 | X | X | X | X | ○ | |
シャッター速度調整 | X | X | ○ | ○ | ○ | |
オーディオ | H.264 & HEVC時 AAC/44.1KHz、 Apple ProRes時 リニアPCM/16bit/48KHz | リニアPCM 16bit 48KHz | リニアPCM 16bit 48KHz | H.264 & HEVC時 AAC/48KHz、 Apple ProRes時 リニアPCM/16bit/48KHz | リニアPCM/Float/AAC 44.1/48/96/192KHz | |
フォーカスピーキング表示 | X | ○ | ○ | ○ | ○ | |
ゼブラ表示 | X | ○ | ○ | X | ○ | |
偽色表示 | X | X | ○ | X | ○ | |
ベクトル表示 | X | X | ○ | X | X | |
波形表示 | X | X | ○ | X | ○ | |
外部SSD記録 | Apple ProResのみ、 自動認識 | ○(自動認識) | X | ○(自動認識) | ○(手動切替) |
画像版の表も入れておきます(表をクリックで拡大)。
5種類のアプリの特徴
内蔵カメラアプリ
- iPhoneを買えばすぐに使える
- 細かい設定はできないかわりに簡単に動画を撮れる
- TikTok動画やショート動画を量産したい人向け
- Apple ProResは外部SSD装着時のみ可能
- まずはこれから始めよう
Final Cut Camera
- 2024年6月20日にAppleからリリースされたiPhone/iPadで無料で利用できる動画撮影アプリ
- iPadと複数台のiPhoneを組み合わせると複数台のiPhoneでのマルチカム撮影可能
- フォーカスピーキングやゼブラ表示が可能
- 外部SSDはアプリ起動後に接続しても自動認識されて切り替わるので非常に楽ちん
- 内蔵カメラアプリで物足りなくなったら次はこれ
MAVIS(MAVIS Pro Camera)
- 非常にマニアック?プロっぽい画面構成で、唯一ベクトル表示が可能
- 画面のデータ表示可能項目は今回の5種類のなかでピカイチでマニアック
- Apple ProRes非対応
- 外部SSD記録非対応
- ちょっと時代遅れの感じが否めない
ProCamera
- 似たような名前のアプリが多いので要注意、販売元はCocologicsであることを確認
- 写真と動画の両方対応
- マニュアル写真撮影アプリとしてはかなりの優れもので筆者は常用している
- このアプリだけで、ストリーミング、前後2カメラでのダブルテイク動画、セルフィー、高感度撮影、ポートレート撮影、ビデオ撮影、通常の写真撮影に対応している多機能万能アプリ
- Apple ProResはProRes 422 HQ、ProRes 422、ProRes 422 LT、ProRes 422 Proxyの4種類全てに対応
- 外部SSDは接続すると自動認識
Blackmagic Camera
- 一番話題になっているiPhoneのハイエンド動画撮影アプリ
- H.264、HEVC、4種のApple ProRes全てに対応
- H.264やHEVCでもログ撮影ができる今回の中では唯一のアプリ
- 撮影中のプレビューでLUTを適用し、カラーグレーディング後の色をイメージできる
- オーディオは32bit floatも可能であるが、デュアルADコンバーターにあらず(そもそもiPhoneにマルチADCは搭載されていない)
- 外部SSDも使えるが切替は手動の設定でやや面倒(自動切替はしない)
- MAVISやProCameraと同じ条件で撮ると試した範囲ではバッテリー消費が2倍くらいになる(筆者の比較範囲において)
- これで物足りないならLUMIX GH7、ソニーのα7しかないかも?
もっとも多機能ですが、それだけに本格的に使うとiPhone本体だけでは物足りなくなります。外部SSDに記録したい、バッテリー駆動時間も伸ばしたい、NDフィルターもつけたいとかやりたいことが増えてきて、ユーザーはSmallRigでケージをかってリグを組んだりとマニアックな方向に進む可能性も秘めたソフトです。
こんな人にはこのアプリが向いている
- 動画撮影が初めてとか理屈がまだよくわからない人、理屈はどうでもいいので簡単に動画を撮りたい人→内蔵カメラアプリ
- とりあえず外部SSDに記録したい人、内蔵アプリよりはもう少し凝って撮りたい人→Final Cut Camera
- 写真をマニュアル撮影したいし動画もパラメータに少々気を使ってみたり高画質のApple ProResフォーマットで記録したい人→ProCamera
- 現状求めうる最高の機能と性能を使いたい人あるいはそのようなアプリで腕を鍛えたい人、ただし長回しせず数分程度のカットを断続的に撮る人→Blackmagic Camera
- 外部SSDとProRes不要な人で、多機能でなくても安定してきちんとパラメーターを調整しながら撮りたい→MAVIS
Blackmagic Cameraに関して注意: YouTubeなどではiPhone最高の動画カメラアプリ!とベタ褒めも多いのですが、Blackmagic DesignのムービーカメラのGUIを寄せているので独特の癖があります。使いこなすにはiPhone裸では辛いところもあり、ケージに入れてリグを組む必要がある場合も出てきます。動画撮影に関する基本的な知識を要求するアプリです。
難易度順とその先は?
筆者の独断ですが、使い勝手のの簡単さや入り込みやすさから並べてみましょう。
- 内蔵カメラアプリ
- Final Cut Camera
- ProCamera
- MAVIS
- Blackmagic Camera
最高峰のBlackmagic Cameraで不十分ならば、スマホ動画を卒業してLUMIX GH7とかSONY α7に乗り換えるしかないかと思います。Blackmagic Cameraはそれくらいに進化した動画カメラアプリです。繰り返しますが、ある程度知識がないといい結果が得られないのがBlackmagic Cameraです。
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