ヤマト運輸が、セールスドライバーの不足が深刻化してきて、配達時間帯指定を見直したり運賃値上げに踏み切ることになったとのことです。
直接的な原因は、Amazonを始めとするネット通販の急速な拡大にあるそうで、国土交通省の「宅配の再配達削減に向けた検討について」によれば、調査サンプル414万個の荷物のうち、再配達無しの1回目訪問で配達完了したのは全体の80.4%にすぎず、15.7%が再配達1回、2.6%が再配達2回、残り4万個である0.9%は再配達3回以上だそうです。すなわち再配達率は19.6%。
利用者側の立場で見れば、店頭購入するより通販購入するほうが絶対支払額が安いってのがあります。消費者として同じものなら安いところから買うのは当然です。
ここで、自分を思い返すと、店頭での支払額>送料込みの通販価格、なら店頭で買いますし、逆なら通販で買います。もちろん、店頭<通販であっても店頭になければ通販で買うわけですが。
思うに、Amazonプライムを始めとする多くの業者で、一定条件をクリアすると送料無料というのが多いわけですが、本当にそれで良いのでしょうか?本来かかるはずの送料が何の理由もなく無料になるわけがない。
本来、かかるはずの送料を我々消費者は正しく支払うべきです。
適切なサービスを継続させるためには、そこにかかるコストを受益者は負担すべきです。受益者としては、店頭購入価格+交通費と通販価格+送料、の双方を天秤にかければ良いわけです。
また、再配達削減に関しては、スマートフォンや携帯電話の普及状況を考慮し、配達前に予定通知をする、注文時には配達予定事前通知(SMS)で利用可能な携帯電話番号を書けば送料を割引する(再配達のリスクが減る)とか、配達先として宅配ボックスを指定すれば割引する、コンビニ受け取りを指定すれば割引するといった施策も受容すべきです。
消費者は便利さ・安さを安直に求めるあまり、結果的に提供されるサービスが減少あるいはなくなり、結果的に自分の首を絞めることになります。
都市伝説なのかもしれませんが、こうした話題には事欠きません。
「とある会社の前にコンビニが出来たけれど、利用するのはその会社の社員ばかり。近隣住民はその会社にオマエの会社の社員がたむろしていて自分たちが買い物できないとクレームを付けた。会社は社員にコンビニ利用禁止通達。結果的にコンビニの経営が悪化し閉店。近隣住民は余計に不便になった」
「とあるバス路線。バスのエンジン音がうるさいから減便を要求した近隣のクレームに従い、減便。結果、利用者が激減し、終始悪化し路線廃止。超不便になった」
まあ、フィクションの域を出ないのかもしれませんが、この筋書きを通販に適用するとこうなります。
消費者「送料が高いから安くしろ、無料にしろ。」
通販業者「はい、一定条件で無料にします。」
消費者「なかなか、家に居ることが少ないのだから、居る時に訪問しろ」
宅配業者「はい、わかりました、再訪問します」
消費者「便利だねぇ、対面販売はいらないよ」
実店舗「売上が上がらないので閉店します」
宅配業者「採算が取れないので、再配達は制限し値上げします」
通販業者「送料無料は採算が取れないので廃止します」
消費者「え?それならお店で買うほうが安いじゃん。え?店?わ!いつの間には実店舗がなくなってる!」
ちょっとストーリーに無理がありますが、適切なサービス対価を支払わないとそのサービスは絶滅することは間違いありません。
通販にだけ頼らず実店舗で買い物をしよう!
適切な送料を支払おう!
Amazonのようなビジネススタイルが、今のインフラでいつまでも繁盛するとも思えません。Amazonが突然日本からビジネス撤退した時、ふと見渡すと周囲に書店は皆無、本を買うのに電車で2時間、3時間と遠出しないと買えなくなる、そんな日が来ないようにしなくては。