この記事では、旅はもとより日常で不可欠な存在のモバイルバッテリーについて、発火や事故のリスクを減らす選び方・使い方を解説します。
モバイルバッテリーの事故データ
NITEによる事故データ
独立行政法人 製品評価技術基盤機構(通称「NITE」)というのをご存知でしょうか?
経済産業省所轄の特定独立行政法人で、主として工業製品の技術的評価や品質に関する情報収集をしているお役所(職員の身分は国家公務員なのでお役所といっていいでしょう)で、最近ではモバイルバッテリーに関する事故やリコール情報の収集・公開をしています。
リチウム二次電池およびその搭載製品の事故でいえば、2013年〜2017年で578件発生し、そのうち402件が火災を伴っています。
そのうち368件は製品の不具合によるものであり、うち209件はリコール対象になっています。すなわち全事故数からみると1/3はリコール情報を事前に知っていれば防げたと考えられます。
もう少し絞り込んで、NITEの事故報告DBを「モバイルバッテリー」で検索すると、2015年〜2018年の間に36件の事故報告があったようです。毎月どこかでモバイルバッテリーの事故は起こっている感じです。
事故の再発防止策についてみると、NITEに報告のあがった36件の事故のうち26件が「製造事業者もしくは輸入事業者が不明であるため、事前に再発防止措置はとれなかった」というものです。
36件のうち、27件は周囲を焼損し内5件は人的被害がでている。さらに2件は火災になっており、一番軽い製品破損で済んだのはたったの7件です。
モバイルバッテリーによる事故が深刻なものであることが理解いただけたでしょうか?
現在の技術ではまだまだ安定した安全な製品とは言えない代物なのですが、ニーズが技術を上回ってしまった結果無理をして製品化していると言えます。もちろんバッテリーメーカーは可能な限りの安全策を施しているはずですが、それでも火災につながるような事故が起こるわけです。
NITEによるリコール情報の収集と公開
NITEではメーカーからリコールがかかったものに関しては情報を収集して、NITEのサイトにも掲載しています。
リコールDBを上記リンクから「モバイルバッテリー」で検索してみてください。
モバイルバッテリーの事故リスクを下げる
リスクを下げる選び方
事故がおこる可能性をゼロにはできないのですが、それを下げるモバイルバッテリーの選び方というのはあります。
- 割高でもちゃんとしたメーカーの製品、モバイルバッテリーでは日本市場で確たる実績があり日本できちんとサポート体制のあるメーカーの製品を買うこと。
- そのモバイルバッテリーのメーカーホームページがあり安全情報なども臆することなく展開されていること。
- PSEマークがない製品は絶対買わない。
- 聞いたことがないような業者の製品は絶対買わない・使わない。もし手元にそういうものがあれば正しい方法で廃棄(リサイクル回収)してもらう。
- 景品で入手したようなモバイルバッテリーでちゃんとしたメーカー製でないものは間違っても使わない。即時に正しい方法で廃棄(リサイクル回収)してもらう。クレーンゲームの景品とか論外。
- 同容量・同機能の有名メーカー製の価格に比べて安すぎるものは買わない。安物買いの銭失い。失うのが銭ならまだマシです。モバイルバッテリーに関してはケチってはいけない。
なぜ製造業社(メーカー)にこだわるかというと、冒頭に紹介したようなリコール情報を事故になる前に得られる可能性が高いからです。
写真と記事内容は関係ありません。念の為写真のバッテリーからはブランド名を消してあります。
先のNITEの事故36例のうち製造・輸入・販売業者不明が17例あり、その中で型式機種もわからないというものが10例もあります。
誰が作って誰が売ったのか、型番は何か?すらわからないようでは、リコール情報なんか得られるわけがありません。
消費者として危険情報を自ら入手して危険を避ける努力をするのは、使用者の義務・責任でもあります。製造業社・販売業社・輸入業社がその元情報を開示してくれないものは、消費者として危険を察知しようがありません。火災になって自家が全焼したり近隣に延焼したら….と想像してみてください。
万一事故が起こった場合も、連絡のしようがなく泣き寝入りとなります。
リスクを下げる使い方
これはメーカーやNITEからも情報が出ておりますが、さらに配慮すべき点を追加してリストアップします。
- 使い方ではないですが、開梱して初めてわかるものとして、型番・製造番号が本体に明記されていることが重要です。とくに製造番号がないものは、最初から品質のトレースなどは考えておらず売ってバックレるタイプなので、買わない・持っていたら使わないで即回収(廃棄)が原則です。もったいないけど事故が起こってからでは遅い。
- 人の目が届かないところでは充電しない
- 寝ている間に繋ぎっぱなしで充電しない
- 薄型バッテリーで膨らんできたら直ちに使用を中止して回収してもらう(販売店等でモバイルバッテリーなども回収してるケースが多い)
- 強い衝撃を与えない、万一強い衝撃(高所からの落下など)を与えてしまったらもったいなくても使用を中止して回収してもらう。特にバッテリー内蔵機器と比べると、バッテリーが裸に近い状態にあるのがモバイルバッテリーなので衝撃の影響を受けやすい。
- 薄型バッテリーはバッグの中で押されて歪むことがある。特に満員電車は要注意。薄型モバイルバッテリーは取り出すたびに平らなテーブルの上に置いて膨らみや歪みをチェックし、異常があればもったいなくても即時使用を中止して可及的速やかに回収してもらう。
- コネクタが歪んだケーブル、被服が剥げたケーブル、強く折れ曲り跡のあるケーブルを使わない(ショートするのを避ける)
- 絶対水に濡らしたり雨に当てたりしない。一旦濡れたものは乾かしても危険なので使わないで回収してもらう。
- ときどきメーカーサイトやNITEのサイトをみてリコールが出ていないことを確認する。
- 容量の割に小型すぎる・スリムすぎるものは、電池の保護を全く考えていない可能性があるか、容量詐欺の可能性もあるので、多少無骨でもしっかりしたものを選ぶ。ちゃんとしたメーカー品であればその可能性は少ないですが….。
まとめ
- モバイル生活に不可欠なモバイルバッテリーですが、安全性が高いレベルの製品になっているは言えません。
- ニッケル水素電池などに比べると危険度が格段に高いのがリチウム系充電池ですので、自らリコール情報などにアンテナを張る必要があります。
- 購入するときは信頼できるお店で、信頼できるメーカーのもの(リコール情報がちゃんと出るようなしっかりしたメーカー)を選ぶこと。間違っても無名の品かわない。無名の販売者から買わない&貰わない。クレーンゲーム景品とか論外。
- 無人状態での充電はしない。
- ケーブルなども断線やショート、コネクタ部分の変形に注意を払う。
- 膨らんでいる・歪んでいるバッテリーは絶対使わない。
- 水に濡れた、雨に濡れた、強い衝撃を与えたバッテリーは使わない。
- 異常を見つけた・異常でないまでもちょっと変かな?と思ったらもったいなくても使用を中止し回収してもらう。
- モバイルバッテリーに関してはケチってはいけない。