ボランティアに参加すると寿命が延びる可能性がある? 〜米ハーバード大学の研究発表〜

ボランティアに参加すると寿命が延びる可能性がある? 〜米ハーバード大学の研究発表〜

複数の報道によれば、米医学雑誌「American Journal of Preventive Medicine」の6月11日オンライン版に、高齢者のボランティア参加は死亡リスクが低くなるという研究結果が発表されました。

ボランティア、日米の言葉の違いに注意

日本語

日本語ではボランティアというと「地域社会サービス、地域奉仕、社会奉仕などを『無償』で行うことを指す場合が多いようです。

仕事に対して特別の対価を貰わないことをよく「ボランティアだからさ、一円ももらえない」と言ったりしませんか?

すなわち前述のとおり地域社会サービス、地域奉仕、社会奉仕に従事するのは間違いないですが、それは有償ではなく無料奉仕という大前提があることが多いのです。

英語

一方英語のvolunteer(アクセントはカタカナで書くと「ティ」の部分にあります)は少々違っていて、元々は志願兵のことを指していました。

そこから転じて、「自ら進んで〜しようと申し出る」という意味合いで、もっとも重要なのは「自発性」です。他人からやれ社会奉仕をやれといわれてしぶしぶやるのはvolunteerとは言いません。

自発的にやるのであれば、それが無料奉仕なのかある程度の対価をもらえるのかは問題ではありません。

日本語だと金をもらったら仕事であってボランティアじゃないというのが通例だと思いますが、英語のvlunteerは無償・有償は基本的に関係なく「自発性」が最も重視されます。



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米ハーバード大学の研究

最初に日本語ボランティアと英語volunteerの話をしたのは、これが米国という英語圏の研究だからです。

表題の「ボランティアに参加すると寿命が延びる可能性がある?」の「ボランティア」は単なる無料奉仕のことではなく、自発的に社会奉仕活動などに参加するという意味にとらえる必要があります。そうでないとこの研究の結果が理解できないのです。

この研究は50歳以上の米国成人を対象としたもので参加人数は12,998人という大規模なものでした。調査は2006年〜2010年の4年間、2008年〜2012年の4年間に渡り、身体的健康、健康的な行動、心理社会的な健康にかかわる34の指標について調べたというものです。

この4年間の調査期間で年間100時間以上のvolunteer活動をした調査対象は、全くvolunteer活動をしていない調査対象に比べて、死亡リスクと身体機能政権のリスクが低下したそうです。それはポジティブな影響や楽観的であること人生の目的などにあらわれている一方で、そうでない対象者は抑うつ的な症状、絶望感、孤独感などが現れているそうです。

ただしvolunteer活動は身体的な健康状態、すなわち糖尿病や高血圧・脳卒中・癌・心疾患・肺疾患などや、健康的な行動、すなわち飲酒・喫煙・睡眠障害や、心理的な状態、すなわち人生の満足感、健康や経済面での満足、うつ病といったこととは関係はなさそうだしています。

volunteer活動は、自分の健康と社会への奉仕を同時に強化できる方法として有望なのかもしれません。

<参考文献>
Volunteering and Subsequent Health and Well-Being in Older Adults: An Outcome-Wide Longitudinal Approach
https://www.ajpmonline.org/article/S0749-3797(20)30138-0/fulltext

(本記事の日本語部分は上記参考文献から筆者が独自に翻訳したものです)

日本は事情が違う

この研究だけをもとに日本でもボランティア活動したほうが良いというのは短絡的だと思います。

冒頭に書いたようにボランティアとvolunteerでは日米両社会での評価がかなり異なります。

日本だと災害復旧支援や高齢者・障害者支援など一部のボランティアを除けば、正直なところ社会的にポジティブな評価が定着しているとは言い難いです。一方で米国などではvolunteer精神は非常に重要なものであり、それは人生を自発的に生きるという活動力にも繋がっているのではないでしょうか?

自発的に社会の役に立つことすることで、いい意味での自己満足感と達成感がたかまり、それが意欲につながり身体状況にポジティブに働くのではないかと思います。

ですので単に「ボランティア」というだけでは日本では同じに扱えないという根拠です。

そもそも日本ではこうした調査がないのでなんとも断言できないのですが、日本流に「無料奉仕」=「ボランティア」という意識がトップにあり、本人の自発性が二の次になっているような状況ではむしろ真逆に「ボランティア活動は寿命を縮める」なんてことになるかもしれません。ボランティア=苦痛という可能性もあるからです。



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