時々よくわからない不具合に出食わすBlackmagic Camera for iPhoneですが、それでも優れた動画カメラアプリであるのは間違いないです。今回は発熱について停止についてSSDのフォーマットと録画フォーマット2種で長回しテストしました。
熱停止問題
過去に筆者がBlackmagic Cameraのテストをしていたたおきに何度か熱停止に襲われました。
この関連記事に記載したように「ProRes 422の4K30pでは結構早くに熱停止しますし、外部SSDも長時間記録ではSamsung T7と付属ケーブルを使ってもコマ落ち停止」という問題に遭遇したのは事実ですが、Webで利用者の評価を見ると熱停止が頻繁に起こるという話も見ません。
どうもすっきりしないので再テストしました。
テストに使用したハードウェアとアプリ
ケージ:SmallRig iPhone 15 Pro Max用モバイルビデオケージ 4391
SSD:Samsung Portable SSD T7(2TB)、付属USB Type-Cケーブル
USB HUB:Belkin USB Type-C 4ポート HUB
モバイルバッテリー:CIO SMARTCOBY Pro 30W 10000mAh
カメラアプリ:Blackmagic Camera Ver2.0.000016
テスト環境
時期:2024年9月上旬
室内気温:27度
室内湿度:68%
撮影パラメーター
解像度:4K(UHD)
フレームレート:30p
カラースペース:Apple Log – HDR
オーディオ:IEEE float
録画時間:60分間回しっぱなし
実験結果:Apple ProRes 422 HQ
Apple ProRes 422 HQはiPhone 15 Pro Maxで撮影可能な最高画質フォーマットです。
クロマサンプリングは4:2:2、ビット深度は10bitです。
実験1:SSDフォーマットがAPFSの場合
APFSは、APple File Systemの略で、最新のiOS/iPadOSとmacOSそしてSSDに最適化された高セキュリティのファイルシステムです。
SSDの発熱は「やや熱い」と感じますが、ひどく熱いわけではなくまあSSDとしてむしろ低い方です。
熱停止やコマ落ち停止、途中のブラックアウトなどは発生せず。
Apple ProRes 422 HQでAPFSフォーマットの記録で発熱は普通にありますがアッチッチというほどではなく、暖かいと熱っ!の中間くらいですが、実用上全く問題ありません。周囲の温度が高いとか夏の屋外では要注意。
実験2:SSDフォーマットがexFATの場合
SSDを購入した直後は普通はexFATでフォーマットされており、Android、iOS/iPadOS、macOS、Windowsのいずれでも使える汎用性の高いフォーマットですが、セキュリティについてはそもそも存在しません。
SSDの発熱は「熱い」と感じますが、APFSと同程度です。
熱停止やコマ落ち停止、途中のブラックアウトは発生せず。
Apple ProRes 422 HQでAPFSフォーマットの記録で発熱はAPFSと同じ程度であり問題なし。周囲の温度が高いとか夏の屋外では要注意。
実験結果:HEVC(H.265)
圧縮率の高い一般的なフォーマットです。
クロマサンプリングは4:2:2、ビット深度は10bitです。
Blackmagic CameraのHEVCでは、Rec.709の場合は4:2:0-10bit、Rec.2020-HDRでは4:2:0-10bit、Apple Logでは4:2:2-10bitとなります。
実験3:SSDフォーマットがAPFSの場合
Phone本体の発熱は「発熱をほとんど感じずわずかに暖かい」程度です。
熱停止やコマ落ち停止、途中のブラックアウトは発生なし。
HEVC(H.265)でAPFSフォーマットの記録ではまったく問題無し。
実験4:SSDフォーマットがexFATの場合
SSDの発熱は「ほんのり暖かい」と感じました。
熱停止やコマ落ち停止、途中のブラックアウトはなし。
HEVC(H.265)でexFATフォーマットの記録では、iPhoneとSSDの発熱はAPFSよりやや多く感じるものの、熱いのではなく暖かい程度でありまったく問題無し。
Blackmagic Cameraの制約と障害
途中ブラックアウトという重大な問題が過去のテストで発生しましたが、その後は再発していません。
とりあえず1時間回しを何度やっても発生しませんので謎と不安だけが残ります。
シャッター速度固定でISOオートができない(Ver2.0)
動画を撮影する場合、通常シャッター速度を固定します。
心地よいモーションブラーがあり、パラパラ漫画っぽくならないシャッター速度はフレームレートの逆数〜フレームレート2倍の逆数です。
つまり30fpsなら1/30〜1/60が、人間の目にとって自然に感じるモーションブラーがあり、パラパラ漫画のようには見えません。
スマートフォンはカメラのようにアイリス設定(絞り設定)がありませんので、明るさの調整で可能なのはISOのみです。
これはかなり痛いです。
開き直ってシャッター速度固定を諦めるしか無さそうな感じで、屋外であればシャッター速度が上がりすぎるのを防ぐためにNDフィルターでの減光は不可欠です。
ちなみにProCamera(Cocologics提供)は可能です。
動画におけるシャッター速度は写真におけるシャッター速度よりはるかに深刻な影響があります。
再現性が無い・少ない障害
- 撮影では何事もなかったが、あとから再生してみると途中がブラックアウト
- LOG撮影のプレビューにLUTを被せていても録画開始するとLUTが外れる
- ゼブラやフォーカスピーキングが録画を開始すると外れる
- 撮影中に画面表示右上のマニュアルコントロール(録画ボタンの3つ上)ボタンをタッチした
- いきなり録画が停止した(録画停止の赤ボタンには触れていない)
- 数十分回したあと、フォーカスの切り替え(録画ボタンの二つ上)を触るとハングして操作を受け付けなくなった。
筆者が遭遇した障害には、致命的なものとそうでないものがありますが、他のカメラアプリでは遭遇したことのない障害に出会ったのは間違いありません。
人気のプロ級動画撮影アプリですが、予期せぬ障害が他のカメラアプリよりは多いであろうことは覚悟が必要です。
といっても、外付けSSD無しかつ外部給電無しの十分程度のカットの撮影で問題が起こったことはありませんので、Blackmagic Cameraでの数十分以上の長回しはやかなり注意が必要です。
まとめ
外部SSD使用で、Apple ProRes 422 HQ、HEVC(H.265)のフォーマットにて、SSDはAPFSとexFATの両方の4通りの組み合わせで60分連続録画テストしたが、熱停止やコマ落ち停止はなかった。
過去のテストでも、10分程度かそれ以下であれば熱停止やコマ落ち停止はないので、数十分以上の長回し撮影をBlackmagic Cameraで行うのは避けた方が予期せぬ障害にあう可能性が少ない。
発熱については外気温や風の有無で大きく影響を受けるようで、夏の屋外撮影は連続撮影は避けるとかモバイルバッテリーとSSDの使用は避けるなどはした方が良い気がします。室内であっても夏場であればエアコンの風が来るところとか扇風機の弱い風を当てるくらいは必要でしょう。
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