ここ2年ほど、世界の大国で想定外のことが起こっています。
一つは、ご存知のイギリスEU離脱。これは投票結果がでるまではEU離脱とかありえないとタカをくくっていたのが裏目に出て、なんんとEU離脱が決まってしまい、驚愕したのは当のイギリス国民。
ありえないことが起こってしまった米国
そしてトランプ氏の大統領選挙当選。これまた結果が出るまでは、まあクリントン氏がベストとは思えないけど、どう考えてもトランプ氏が当選するわけはないだろうと思われいたようですが、あらま開けてビックリ玉手箱、当選しちゃったよ、ということです。
問題はイギリスではなくトランプというおよそ世界の超大国の頂点に立つ人物にはおよそ相応しくない人物をトップに据えてしまったアメリカです。
貿易でアメリカ一人勝ちは絶対あり得ない
一つ言えるのは、彼はプロの政治家ではなくプロの経営者だということ。彼は自分をアメリカ株式会社のCEOになるのだと認識してる気がします。アメリカ・ファースト、すなわち競合他社(=他国)を制してトップになる、アメリカの利益を最大限にするというのがコミットメントです。
しかし、貿易を取り上げれば、一国だけがどこの国に対しても貿易黒字になるというのは絶対ありえない。もしそうなると世界中から貿易不均衡を責めたてられ、米国からの輸入品に高率関税を果たすでしょう。そりゃそうです。企業の一人勝ちはありですが、世界貿易の中で一国の一人勝ちはありえない。ある分野では黒字だが別の分野では赤字、ある国には赤字だがある国には黒字、これらが極端ではないかぎり総合的にみてチャラに近くなれば良いのです。そうでないと、Win-Winの関係にはなりえない。
思いつきだらけ
まず言えるのはトランプ氏には政治家としてのイデオロギーがない。彼の信念や思想の根底の流れは何なのかまるで見えません。だから出て来る発言も思いつきの漂流発言ばかり。
思いつき発言ばかりなので、先日の記者会見でも具体的なところは全く見えない。選挙中に強調しており当選の一番の要素とであった不法移民対策の中で、唯一具体策だったメキシコとの国境に壁を作る、というのも費用はどうするのか全く不透明で論理性がない。
トランプ氏はメキシコに払わせると言っているが、メキシコ側は絶対払わない(当然だが)と断言している。となると、トランプ氏が自腹を切らない限り、結果的にアメリカ国民の税金を使うしかなく、これはもう国民の反感をかうのは避けられないでしょう。あるいは公約に反して壁建設を断念する。どちらにしても批判は避けられません。これは論理性欠如が故に自ら掘った墓穴。
さらに問題なのは深夜のtwitter発言。大統領就任間近の人間が相変わらず夜中に起きてtwitterで爆弾を投げており、翌朝、側近がそれらをとり繕うのに必死の状況は相変わらずで、共和党主流派との乖離も日増しに激しくなり、就任を前にして既に周囲に強い味方が居なくなりつつあります。大統領といえども一人では何も出来ないというのを理解していないようです。
大国の次期大統領が夜中に勝手にtwitterなんかで爆弾を投げるなんてありえない。国のトップとしての意思表明は、側近や閣僚と十分内容を揉んで表明されるべきだが、夜中に起きて思いつきを140文字で投げられても、それは寝言・戯言以上の何ものでもありません。今までtwitterに投げてきたのも、ほとんどが思いつきのようなことばかり、さらに、思いつきの元の情報すら正しく理解していない。トヨタ批判がいい例です、正しい情報を元にした批判ではなく勝手な思い込みでの批判をしたために、結果的にトランプ氏は恥をかくことになった。
要するに、トランプ氏にはイデオロギーがなく、バードビューもなく、論理的思考も全くできない子供・駄々っ子です。先進国のトップに立った人物でこれほど酷い人物は近年例を見ないです。小学校の学校委員のほうがはるかにマシでしょう。
問題はアメリカ国民自身にある
しかし、もっと重要なのは、こういう人物だと分かっていて選んだのは他ならぬアメリカ国民であるということ。トランプ氏はクーデターで政権を握ったのではなく、民主主義憲法の定めるところにより正規の手続きを経てアメリカ次期大統領の座を獲得したわけです。アメリカ国民の思考が漂流しているから、こういうとんでもない人物がトップになってしまったと言えます。だから、最大の問題はトランプ氏よりアメリカ国民の考えが漂流してしまっていること。昔のドイツがヒトラーを産んでしまったのと同じです。
幸いにもアメリカ人の良識ある人々はこのとんでもない事態に気づいているようで、各地でデモや抗議集会などが開かれているそうです。
閣僚候補は金持ちか企業トップが目立ちます。トランプ氏当選の原動力となった白人底辺層を理解しそうな人物は一人も見当たらない。この時点でトランプ氏に投票した人々はかなりがっかりしているのではないでしょうか。クリントン氏も金持ちの代表だったが、トランプ氏はそれ以上に自分の利益しか考えない金持ちだったのだと分かってきたわけです。何てこった!ってなところでしょうか。
4年は持たない
こうして考えると、トランプ氏が無事に4年の任期を勤め上げるとは思えません。協力者が居なくなり辞任に追い込まれるか、弾劾にかけられて免職させられるか….。
とはいえ、一ヶ月で辞任するわけもなく最低1年は続くでしょう。
こうなると世界はアメリカを除外して回していくことを考え始めます。気づいたときには超内向きアメリカの世界各国への影響力が低下し、見掛け倒しの大国ではなくなっている可能性もあります(もちろん経済的・軍事的に大国は維持するでしょうが、外交的影響力という意味ではかなり世界での求心力は低下する)。アメリカ以外の西側諸国が団結すれば可能ですが、それも今の世界情勢ではかなり厳しい。
まず当面はトランプ氏の一挙手一投足に惑わされず冷静に見守るしかありません。