Evernoteからの移行先としてNotionは適切か?ビジネスの継続性からも考察した

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サービス低下が著しいEvernoteからMicrosoft OneNoteに移行した筆者。世間の情報によればNotionに移行している人もそれなりにいるようです。そこで筆者もNotionへの移行についても真面目に検討してみました。単に機能面だけではなくビジネスとしてNotionはどうなのかも可能な範囲でみてみます。

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Notionという会社

Notion Labs Inc.

会社概要:
・社名:Notion Labs Inc.
・本社:米国 カリフォルニア州 サンフランシスコ
・URL:https://www.notion.so/
・創業:2013年
・サービス開始:2018年6月(Android版)
・日本語対応:2022年11月
(以上、出典:Wikipedia「Notion」)

以下Simple.inkからの情報です。

・総ユーザー数:3,000万人
・総顧客数(有料で利用しているユーザー数):約400万人、有料ユーザー比率13.3%
・時価総額:約100億ドル(1兆4250億円)
・収益:約6,720万ドル/年(95億円)、昨年から36%増
・従業員:約400人
・保有資金:3億5000万ドル(500億円)、2019年の保有資金は2,000万ドル(約28億円)だった
・ユーザー年齢層:大部分は17〜35歳

かなりの勢いで伸びていますが、だからといってこの先も安定という保証は全くありません。Evernoteも100億ドル超えのユニコーン企業としてブイブイ言わせていた時期がありましたが、今は見る影もないことは心に留めておくべきです。

フリーミアムサービス

フリーミアムというのは、基本的なサービスは「フリー(無料)」で利用できるが、それ以上の機能については「プレミアム(有料)」で提供することを言います。

フリーミアムサービスビジネスのポイントはフリーとプレミアムのボーダーラインの設定です。

Webのフリーミアムサービスではフリー利用者が95%でもプレミアム利用者が5%いればビジネスは成立すると言われています。

Google Bardによれば、Evernoteのユーザー数は約2億5000万人有料ユーザー数は約250万人らしいので、プレミアムユーザー比率はたったの1%です。これではビジネスが成立するといわれるボーダーラインの5%には遠く及びません。2億4750万人のユーザーを支えるために250万人がお金を払っていることになります。

さて、Google Drive、OneDrive、Dropboxなどのクラウドストレージは無料と有料の間をストレージ容量という非常に明確な仕切りをつけて、これ以上ならお金払ってねということになっていてシンプルでわかりやすいため、有料への移行のモチベーションも明確です。

Evernote初期の頃は月間アップロード容量とPDFやイメージの中の文字検索機能といったところになってしまい、事実上無料から有料への移行のモチベーションを明確に与えることができませんでした。最初からノート数制限をかけておけばよかったのかもしれませんが、そうすると普及しない可能性もある。そのあたりの匙加減は難しいところです。

Notionについて筆者が不安を感じるのはこの点です。

Notionは初期のEvernote同様で、個人利用であればノート数制限やブロック制限はありません。Simple.inkの情報では有料ユーザー率は13.3%と非常に多いわけではありませんが、Evernoteが現在1%であるのに比べれば桁違い。

昨年の日経クロステックの記事によれば、個人向けクラウドサービス利用者のうち有料サービス利用者は13.5%だそうで、見事にNotionの比率と一致しますので、あながちNotionが低いとはいえません。むしろごく平均的だといえます。

そういう意味から現時点においてNotionの先行きが怪しいとはいえませんが、フリーとプレミアムのボーダーラインが今後どうなるのかは注目すべきです。

可能性としてフリープランのページ数あるいはブロック数の制限が付与されるというのはあり得ます。

Evernoteを追い出された無料ユーザーの何割かがNotionに流れ込んでくると、フリーの比率は高くなるのは間違いなく、それが経営状態をマイナスに引っ張る方向に動く可能性があります。Evernote無料ユーザーは有料プランで利用できるNotionの特徴の一つでもあるチームコラボレーション機能には興味がないはずですから。

Evernoteの没落がNotionをも巻き込む可能性は、Evernoteが巨象であるだけに少なくないと思います。

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Notionの特徴・メリット

Notionのビジネスの特徴

・オンラインでのチームコラボレーションを得意とするメモ取りWebアプリの提供
・Evernoteと同じフリーミアムであり、基本サービスは無料で、より高度高機能なサービスは有料とするビジネススタイル
・全世界でのユーザー数は3000万人以上、有料ユーザーは400万人、有料利用率は13.3%
・Notion Labs Inc.は事実上Notionだけの一本足打法

Notionのアプリケーションの特徴

・WIndows、macOS、iOS、Androidのマルチプラットフォーム
・有料プランではチームコラボレーションが可能である
・オフラインでの利用には非対応(オンラインのみ)
・フォルダやファイル、セクションなどいう決まった階層が存在しない
・Webのようにページを階層化していく方式で事実上フォルダのように階層化することが可能
・ページのビューの種類が豊富
・単なるメモを超えた豊富な機能
・メモ的にもデータベース的にも使える
・テンプレートがメチャクチャ豊富
・基本的なデータベース機能があり、一方向のリレーションはもとより双方向のリレーションも扱える
・リレーションに基づき集計するロールアップという機能が使える
・データベースには基本的な関数があり、合計やカウント、条件判断や文字列操作などが可能である

Notionの場合、Evernoteからの単純な移行だけではNotionが持つ優れた機能の半分も発揮できません。

本領はチームコラボレーションでありデータベースや豊富なテンプレートの活用です。そういう意味ではEverenoteからの移行ユーザーはすぐには活用しきれないかもしれん。

むしろNotionを初めて使う人のほうがどんどん新しい使い方をする可能性もあります。

Notionのネガティブ要素

・ビジネスがNotion一本足打法であり、会社の舵取り次第では第二のEverenoteになる可能性がある
・Evernoteの無料を追い出されてNotionの無料に移行したユーザーがNotionの有料ユーザー比率を下げて、中期的には経営を圧迫する可能性がある
・Evernoteの無料からNotionの無料に移行したユーザーが、チームコラボレーションなどの有料サービスを使う積極的な理由がない
・無料と有料のボーダーラインについては、Evernote同様にデータ容量やデータの数量的な制限がないので有料プランに移行するモチベーションが生まれない
・結果的に現在の無料プランのサービス内容が改悪される可能性がある
・オフラインで使えない
・Evernoteからのインポートは恐ろしく・めちゃくちゃ・とんでもなく時間がかかる
・3rdパーティ提供のenex2notionというアプリを使えば、Evernoteのエクスポートファイル(.enex)をNotionにインポート可能だが、コマンドラインで使うツールであり知識のない人にはハードルがかなり高い

Evernoteからのインポートがそう簡単ではないのが逆に救いでもあります。

前述しております通り、最大の不安はフリーとプレミアムのボーダーラインです。ここに明確なページ数やブロック数制限がないのはEverenoteと同じ構造です。

Evernote無料を追い出されたユーザーはNotion無料プランから有料プランに移行する理由は何もありません。それが増えるとNotionの経営を圧迫するのは疑いないところです。

Notionが生き残り伸びていくために必要なのは、個人ユーザーを広げることではなく有料のビジネスユーザーを取り込むことです。現在400万人の有料ユーザーが今後も伸びていくのかどうかで、中期的な存続がきまるでしょう。

個人ユーザーとして、Notionの優れた機能をつかえばつかうほど、Notionが傾いた時の代替手段がなくなることも覚えておきましょう。単純にクラウドメモとしてつかうのであればなんとかなると思いますが….。

 

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