2025年のフラグシップスマートフォン市場で注目の2機種、Samsung Galaxy S25 UltraとSony Xperia 1 VIIを徹底比較。最新のSnapdragon 8 Elite搭載、8K動画撮影対応、そしてセキュリティ面を重視した選定基準で、ハイエンドユーザーが本当に求める性能を検証します
はじめに:比較検討の経緯
筆者は2024年4月にSamsung Galaxy S24を購入し、当面は買い替える予定はありませんでした。しかし、先日AQUOS Sense9やR10のブログ記事を執筆する中で、1インチを超える大型センサーを採用したR9 Proに興味を持ち、改めてフラグシップスマートフォンの比較検討を行うことにしました。
比較対象機種の選定基準
高額なハイエンドスマートフォンに買い替える以上、その時点の最高性能を求めるのが筆者のポリシーです。以下の条件で機種を絞り込みました。
必須条件:
- 中国製は除外(セキュリティ上の懸念がある)
- 画面サイズ:6.5インチ以上
- CPU:Qualcomm最新のSnapdragon 8 Elite
- ストレージ:512GB以上
- 発売日:2024年6月〜2025年6月(過去1年間)
- Felica対応
- 高性能な写真・動画撮影機能
- プロ向け動画撮影アプリ「Blackmagic Camera」が使えること(RAW動画撮影やLog撮影に対応)
- 超広角より望遠を重視(望遠画質の高さ)
CPU性能比較:なぜSnapdragon 8 Elite限定なのか
この観点からCPUにTensor G4を使っているPixel 9シリーズは除外しました。以下の表のように両CPUの性能差は明らかです。
ベンチマーク | Tensor G4 | Snapdragon 8 Elite | 性能差 |
---|---|---|---|
Antutu 10 General | 1,257,329 | 2,744,741 | 2.18倍 |
CPU | 346,368 | 602,481 | 1.74倍 |
Memory | 219,407 | 534,209 | 2.43倍 |
UX | 233,692 | 442,171 | 1.89倍 |
GeekBench 6 Single-Core | 2,005 | 3,155 | 1.57倍 |
GeekBench 6 Multi-Core | 4,835 | 9,733 | 2.01倍 |
データ出典:NANOREVIEW.NET(https://nanoreview.net/)
最終候補機種とその理由
選定された2機種:
- Samsung Galaxy S25 Ultra:2025年2月14日発売、韓国製
- Sony Xperia 1 VII:2025年6月5日、日本製
除外した機種とその理由:
Asus ZenFone 12 Ultra(台湾製)
- 6軸ジンバル内蔵を謳うが、実際は従来の光学手ぶれ補正(OIS)を拡張したもので、DJI OSMO Mobileシリーズのような3軸機械式ジンバルとは根本的に異なる
- Blackmagic Camera非対応
- YouTube等の実写レビューでは他2機種に対する明確な優位性が見られない
AQUOS R9 Pro(日本製)
- CPUがSnapdragon 8s Gen3(Tensor G4と同程度の性能)
- カメラアプリの操作性と仕上がりに課題
- 約20万円のフラグシップながら動画は4K60fpsまで
- Blackmagic Camera非対応
Galaxy S25 Ultra vs Xperia 1 VII:詳細比較
価格・OSサポート比較
項目 | Xperia 1 VII | Galaxy S25 Ultra |
---|---|---|
価格 | 204,000円(12GB/256GB) 218,900円(12GB/512GB) 234,300円(16GB/512GB) | 199,800円(12GB/256GB) 217,800円(12GB/512GB) 253,800円(12GB/1TB) |
OSサポート | 最大4世代OS、6年間セキュリティアップデート | 最大7世代OS、7年間セキュリティアップデート |
カメラ詳細比較
メインカメラ
項目 | Xperia 1 VII | Galaxy S25 Ultra |
---|---|---|
解像度・レンズ | 48MP, f/1.9, 24mm | 200MP, f/1.7, 24mm |
センサーサイズ | 1/1.35″, 1.12μm | 1/1.3″, 0.6μm |
動画性能 | 4K@24/30/60/120fps HDR | 8K@24/30fps, 4K@30/60/120fps, 10-bit HDR, HDR10+ |
望遠システム(重要比較ポイント)
項目 | Xperia 1 VII | Galaxy S25 Ultra |
---|---|---|
望遠カメラ | 12MP, f/2.3〜f/3.5, 85〜170mm 3.5-7.1倍連続光学ズーム センサー:1/3.5″ | 10MP, f/2.4, 67mm 3倍光学ズーム センサー:1/3.52″ |
超望遠カメラ | なし | 50MP, f/3.4, 111mm 5倍光学ズーム センサー:1/2.52″ |
最大ズーム | 光学7.1倍 デジタル3倍 光学×デジタル21.3倍 | 光学5倍 クロップズーム10倍 デジタル10倍 光学×デジタル100倍 |
Xperia 1 VII:特徴と変更点
失われた機能
Xperia 1 VIIでは、従来のXperiaらしさを象徴する機能が削除されました。
- Photography Pro、Videography Pro、CInematography Proの廃止:αカメラライクなUI操作ができるPhotography Proをはじめとする高機能アプリが廃止されている(Xperia 1 VIからすでに廃止となっている)
- カメラモニター機能廃止:一眼カメラの外部モニターとして使用できる機能を削除
これらの変更により、「Xperiaならでは」の差別化要素が大幅に減少しています。
残存する優位点
- microSDXC対応(最大2TB)
- 3.5mmイヤホンジャック搭載
- WALKMAN譲りの高音質
- 物理シャッターボタン
- αライクなナチュラルな画作り
Galaxy S25 Ultra:強みと課題
進化したポイント
- 超広角センサー強化:Galaxy S24 Ultraの12MPから50MPに向上
- 望遠撮影の描写力向上:各種レビュー動画や作例を比較検証した結果、s解像度と描写力でXperia 1 VIIを上回る
- 軽量化:15g軽量化
強み
- Sペン対応
- 望遠:最高100倍
- 全自動通話録音
- AI通話機能:AI音声⇔文字変換による通話サポート
課題:3倍望遠カメラの謎仕様仕様
- 3倍ズーム:10MP・1/3.52″(小型センサー、画素数も少ない)
- 5倍ズーム:50MP・1/2.52″(大型センサー)
ポートレート撮影で多用される67mm(3倍)域に、なぜ性能の劣る小型センサーを配置したのか、設計思想が謎です。
総合評価と選択の指針
用途別推奨機種
Galaxy S25 Ultra が適している人
- 望遠撮影を重視(5倍〜100倍の高倍率ズーム)
- 動画撮影性能を求める(8K撮影、10-bit HDR対応)
- 通話録音機能が必要(詐欺対策等)
- Sペンを活用したい
- 長期間のOSサポートを重視(7年間)
Xperia 1 VII が適している人
- 音質を最重視(3.5mmジャック、WALKMAN音響技術)
- ストレージ拡張性が必要(microSDXC対応)
- ナチュラルな画作りを好む
- 物理シャッターボタンを重視
- 超広角撮影を多用(大型センサー採用)
筆者の選択とその理由
結論:Galaxy S25 Ultra を選択
- 望遠撮影重視:筆者の撮影スタイルに合致(超広角使用頻度低)
- 通話録音機能:Galaxy S24で重宝しており必須機能
- Sペン機能:Galaxy S23 Ultraで愛用していた便利機能
- 長期サポート:7年間のOS・セキュリティサポート
- 動画撮影の拡張性:8K撮影、Blackmagic Camera対応
ただし、音質重視やmicroSD対応を求める方、よりナチュラルな画作りを好む方にはXperia 1 VIIも十分選択肢になり得ます。
補足:中国製スマートフォンのセキュリティ上の懸念について
政府機関による報告:
リトアニア国防省:Xiaomiに検閲機能発見の報告
https://gigazine.net/news/20210924-lithuania-chinese-phone-cybersecurity-risk
タイ政府:Oppoのデータ漏洩疑惑で調査命令
https://www.nationthailand.com/business/corporate/40045516
インド政府:中国製端末のデータプライバシー懸念を表明
https://telecom.economictimes.indiatimes.com/news/internet/data-privacy-india-must-mandate-chinese-handset-makers-to-support-indian-version-of-android-os/105588215
民間組織による指摘:
NOYB(欧州デジタル権利団体):TikTok、Xiaomi等の不正データ転送疑惑で提訴
https://www.notebookcheck.net/Data-privacy-at-risk-TikTok-Temu-and-Xiaomi-s-illegal-data-transfer-to-China-scrutinized-by-digital-rights-organization.948602.0.html
エディンバラ大学研究:中国製Android端末の想定以上のデータ収集を確認
https://informatics.ed.ac.uk/news-events/news/news-archive/android-phones-china-collect-more-user-data
これらの客観的事実から、機密性の高い業務用途や個人情報保護を重視する場合、中国製端末は避けるべきと判断しています。