遅延の一般的対応(国内線)
JALやANAといったメジャーキャリアで、遅延のときは一般的にどうなるかを調べてみました。
航空会社は約款に従う
各社サイトに明記されているのは、天候や機材故障などの場合の払い戻しや別空港に向かった場合の地上移動費の補償だけでした。すなわち購入された航空券の最終目的地まで乗客を運ぶという大きな目的が達成されればそれで航空会社として目的を達成した(契約に基づき義務を履行した)と言うことです。
まずは、基本のキ、日本航空を例にとって国内旅客運送約款を調べてみましょう。
約款なので読みづらいと思いますが、ここは我慢してしっかり読んでください。
会社は、法令及び官公署の要求、航空保安上の要求(航空機の不法な奪取、管理又は破壊の行為の防止を含みます。)、悪天候、不可抗力、争議行為、騒擾、動乱、戦争、その他の会社のいずれかに生じたやむを得ぬ事由により、予告なく、航空機の運航時刻の変更、欠航、休航、運航の中止、発着地の変更、緊急着陸、旅客の搭乗制限、手荷物の全部又は一部の取卸しその他の必要な措置をとることがありますが、当該措置をとったことにより生じた損害については、本条第1項、第2項、第3項及び第4項により会社が責任を負う場合を除き、会社は、これを賠償する責に任じません。
日本航空 国内旅客運送約款 第4節責任 第43条会社の責任より
上記約款記載の第1項は旅客の死亡または負傷その他の身体の障害の場合に発生する損害について記述しています。
第2項は受託手荷物の破損、言質、紛失または毀損の場合に発生する損害について記述しています。
第3項は第1項及び第2項の損害において会社や使用人が損害を防止するために必要な措置をとったあるいは取ることができなかったことを証明すれば責任を負わないと記述しています。
ですから、約款上は管制指示により遅延が発生し、最終目的地には到着したが、到着時刻が深夜になり宿泊せざるを得なかったとかタクシー利用を余儀なくされたといった場合でも、航空会社は賠償責任を負う義務はありません。
最終目的地まで運んだのだから、あとは貴方の責任だよ、と言っているわけです。
例を挙げる
例えば伊丹発羽田の最終便が遅延して、羽田空港発の最終電車(京急・東京モノレール)に乗れなくても、羽田が最終目的地であれば、それが何時であろうが目的は達成したということです。
ただし、現実的には交渉次第でいくばくかの補償を得られる場合があります。
JALの場合、会社責任ではない場合(天候や管制指示など)は5,000円上限、整備不良などJAL責任である場合は15,000円を上限として後日振込支払いすることがあるようです。幸いにもそういう目にはあったことがないので、あくまで伝聞ですが…。このあたりJALやANAは手厚いと思います。
約款上は支払い義務はないということを心に留めておくべきです。
LCCでは基本的にこうした対応は一切期待できません。全ては自己責任で自腹対応が原則です。何もなければ安いけど、何かあれば高くつくのがLCC。
クレジットカードによる遅延補償
JALの場合、例えばJCBブランドのJALカード CLUB-A ゴールドカード(であれば、「国内・海外航空機遅延保険」というのが付帯保険としてついています。VISA/MASTERには「JALカード海外航空便遅延お見舞金制度」しかありません。
当該カードで航空券を購入して遅延被害にあった場合は、宿泊・ホテル代の領収証をもらっておきましょう。これがないと請求できません。
ANAカードでも類似の補償があります。JCBブランドはJALカードと同じ、それ以外のブランドでは金額は少ないですが多少の補償を受けられます。いずれも当該カード精算で当該航空券を購入した場合の自動付帯となります。
カード付帯保険で遅延補償を受けようとするなら、JCBブランドを選んだ方が良いです。
遅延により乗り継ぎ便に乗れなかった場合
昨日の記事では、羽田/成田とセントレア2往復4レグの紹介をしました。
JL3087(成田→セントレア)は海外から到着した国際線機材を国内に使用する便で、そのせいか長時間ディレイが多い便です。
セントレアから戻り(4レグ目)の最終便となるJL208(セントレア→羽田の最終便)との乗り継ぎが時刻表上は50分です。
一般的には国内線の同一ターミナル内での乗り継ぎですから、50分は十分な時間と言えます。
しかし、JL3087は言葉は悪いですが遅延常習便といえます。flightrader24をみると、3月21日は定刻18:35出発が20:09出発となり、着陸時刻は21:02とすでに20:40のJL208は出発しています。
同じく3月5日は20:40の着陸となりこれまたアウト。3月1日は20:38着陸で同じくアウト。
1ヶ月に3回も1時間以上のディレイです。乗り継ぎ時間が2時間くらいあればまったく気にしませんが、さすがにドキドキです。
私が搭乗したときも、成田の混雑を原因とする管制指示で出発が15分だか20分程度遅れました。この程度だからまだよかったのです、間に合いましたから。
航空会社の補償を期待できるケース
社内ルールにはあるのかもしれませんが、約款に明記がない以上は旅客から見ればケースバイケースでの現場対応ということになりますが、補償を期待できる前提条件があります。
それは、乗り継ぎが一連の予約として成立していることです。
乗り継ぎの前後の便を別切りで購入してしまうと、補償は期待できなくなります。なぜなら搭乗者の思う最終目的地と航空会社が捉えている最終目的地が異なるからです。
航空会社の補償が期待できない場合
同じ航空会社でないとなると論外ですが、同じ航空会社であっても別切りチケットで航空会社に乗り継ぎ連絡をしてない場合は、補償を受けられる可能性は低くなると思ってもいいと思います。
ただ、これも交渉次第。
乗客としての事前対策
空港で走れる体にしておく
乗ってから大幅なディレイが発生し、どうにもならない場合はとりあえず行くしかありません。
私の例ですと、搭乗したJL3087が出発後の管制指示等でのディレイによりJL208に乗り継げなかった時は、その日は羽田に戻る手段はないので名古屋に宿泊せざるを得ません。
とはいえ、ギリで間に合いそうなら、(機内呼び出しをされて真っ先に降機させられ)待ち構えたグランドさんと一緒にダッシュ!なんてのはよくある話です。
ダッシュできるように普段から運動しておきましょう。特にJGC回数修行僧の心構えです(苦笑)。
宿泊できる準備
それも間に合わないような場合ですと、これはもう航空会社との交渉次第ですが、私の例のようにJL3087→JL208を一連の予約で購入している、すなわち航空会社に乗り継ぎ(乗り継ぎとしては、成田→セントレア→羽田という一般的にはありえないへんちくりんなルートですが乗り継ぎには違いない)であることが記録されているのが大事です。
乗り継ぎとして正規に予約記録があれば、交渉次第で宿泊の提供が期待できます(あくまで好意による可能性です)。
予約の都合で乗り継ぎ前後の予約が別切りになっていたとしても、事前に乗り継ぎであることを伝えておけば、同じ航空会社である限り乗り継ぎの記録が入るはずです。
航空会社が翌日便を手配してくれ、宿を自腹にせよ航空会社負担にせよ宿泊を余儀無くされるわけで、その場合は最低限の一泊準備が必要です。
まあ、保険みたいなものですね。下着と必要ならいつも飲む必要がある薬など。下着は男性ならコンビニでもなんとかなるにせよ、処方薬はどうにもなりません。ご注意を。
まとめ
遅延が発生した時の航空会社との交渉でいい結果を勝ち取るためには、絶対に高飛車で出てはいけません。窮状をきちんと紳士的に丁寧に訴えて理解してもらうのが先です。
相手も人間であり、いきなりガーガー言われたら、なんとかしてあげようという気持ちも吹っ飛びます。
まとめます。
- 乗り継ぎのある区間は一つの予約にして乗り継ぎであることを客観的に明らかにしておく。
- 遅延のときには、相手の立場にたった紳士で柔らかな態度での交渉が必要です。
- そして最悪のための最低限の一泊準備(下着類と必要な薬、特に処方薬を忘れずに)。
- カードの付帯保険に請求する可能性がある場合は、ホテルやタクシーなどの領収書をきちんともらう。上様ではダメ、本名を記載してもらう。
- 翌日が避けられない重要なアポがある前日には、宿泊になる可能性があるクリティカルな乗り継ぎ旅程は絶対に入れない。
これさえあれば怖くありません。
さあ、恐れずに乗り継ぎしましょう。