フレームドロップ発生、iPhone 15 Proで外付けSSDに直接4K動画を記録する方法を検証してみた

フレームドロップ発生、iPhone 15 Proで外付けSSDに直接4K動画を記録する方法を検証してみた

iPhone 15 ProではUSB Type-C 10Gbpsに対応し、SSDへ直接動画を記録することが可能になりました。現状では内蔵カメラアプリか、Blackmagic Cameraを使用する方法のみです。両者をテストしたところ、Blackmagic Cameraではフレームドロップが発生することが判明しました。そこで外付けSSDに直接記録する方法について問題なく使えそうかどうかを検証してみました。

検証をした理由

日本や海外のWebサイト・YouTubeでは、iPhone 15 Proで外付けSSDに直接動画記録をする解説が数多あるようです。

それらの解説や動画はどれも動画撮影時間はテスト的に短いものばかりです。メインの映像は一眼カメラで撮影し、iPhone 15 ProではBロール用に1時間とか2時間回しっぱなししたいような状況で使えるのかどうかが全くわかりません。

現在直接SSDに記録できるのは、iPhone内蔵カメラアプリとBlackmagic Cameraアプリのみです。この両者について1時間の連続撮影できるのかどうかを確認する必要が出てきました。

検証機材について

どのくらいの長さの動画を撮るかにもよりますが、iPhoneだけで外付けSSDを長時間駆動するのはいくらSSDでもiPhone内蔵バッテリーの負荷が高くなりますので外部給電が必要です。

筆者個人の実験で確認しているのは以下のような環境です(iOSのバージョンは17.1)。発熱による影響を避けるためiPhoneのケースは外しています。

SSDとUSBハブの間のケーブルはSSD付属のUSB Type-Cケーブルを使用しています。

筆者の経験的注意事項:
モバイルバッテリーは25W以上のものが無難のようです。

ADATAの18Wのモバイルバッテリーを使った時にはiPhoneのバッテリー消費ステイタス([設定]>[バッテリー])で確認すると当該時間帯は60%以上をUSBアクセサリ(=USBハブとSSD)が食っていましたが、25Wまたは30Wのものを使うとiPhoneのバッテリー消費ステイタスにはUSBアクセサリは表示されませんでした。

すなわちこのUSBハブ(Buffalo BSH4U505C1PWH)とiPhone 15 Pro Maxの組み合わせでは、18W給電能力のあるモバイルバッテリーではSSDまで電力が回りきらずiPhoneから供給されるが、25W以上の給電能力をもつモバイルバッテリーではSSDへはモバイルバッテリーから給電されiPhoneの電力がSSDに回されることはないようです。

この状況は使用するハブによって全く異なる可能性があり、iPhone 15 Pro MaxとiPhone 15 Proでも違う可能性があります。



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方法1 -内蔵カメラアプリ

最初の方法は内蔵カメラアプリを使って1時間連続撮影です。

テストとテストの間では全てのアプリを終了させたのちにiPhoneが十分冷えてから行っています。

フォーマットApple ProRes 422 HQHEVC (H.265)
解像度4K4K
フレームレート60fps60fps
ビット数最大12ビット10ビット
データレート(ビデオ)1.49Gビット/秒60.80Mビット/秒
カラーApple LogApple Log

内蔵カメラアプリの場合はApple ProRes 422 HQで4K・60fpsという高画質であっても外付けSSDに特にエラーも出ることなく録画できましたが、フレームがドロップしているかどうかまでは確認できていません。内蔵カメラアプリではフレームドロップ(コマ落ち)が発生してもエラーや警告は表示れるかどうかは不明です。Appleによれば「録画書き込みスピード不足」メッセージが出ることがあるそうですが…。

ProResやHEVCのどちらであっても4K 30fpsまでに抑えるほうが無難ですし編集するにもファイルが大きくなりすぎます。

内蔵カメラアプリは細かい設定ができないのが難点ですが、そこそこ安定して使えるのはさすがにApple純正です。ポストプロダクションの中でカラー調整(カラーグレーディング)しやすくするためProResを選んでLog撮影が好ましいと思います。HEVCではLog撮影できませんので注意が必要です。

方法2-Blackmagic Cameraアプリ

Blackmagic Design社からリリースされている「無料」アプリのBlackmagic Cameraを使って1時間連続撮影です。iPhoneを冷やすのは内蔵カメラアプリと同じく、テストとテストの間では全てのアプリを終了させたのちにiPhoneが十分冷えてから行っています。

無料アプリですが機能的には現存のiPhone用動画カメラアプリの中でトップレベルであり、さすが映像業界でトップレベルの機器を開発しているBlackmagic Design社です。

iPhone 15 Pro / Pro Maxで内蔵カメラアプリ以外では唯一Blackmagic Cameraだけが外付けSSDに直接記録できる機能を持っていますが、外付けSSDへの直接記録では残念ながらフレームドロップあるいは「不明なエラー」が発生して停止します。どれくらいの長さ録画すると発生するかはその時によって様々です。1時間連続録画テストすると1〜2分で発生することもあれば、40分くらいしてから発生する場合もありますし幸いにも発生しない場合もあります。

外付けSSDへ直接記録(ProRes系60fps)

フォーマットApple ProRes 422 HQApple ProRes 422Apple ProRes 422  LT
解像度4K4K4K
フレームレート60fps60fps60fps
ビット数最大12ビット最大12ビット最大12ビット
データレート(ビデオ)1.43Gビット/秒1.03Gビット/秒670.68Mビット/秒
カラーApple Log – HDRApple Log – HDRApple Log – HDR
エラー2回ともフレームドロップ発生で停止2回ともフレームドロップ発生で停止2回ともフレームドロップ発生で停止

ProRes 422 HQ / ProRes 422 / ProRes LTの全てで4K 60fpsではフレームドロップが発生して停止しました。Blackmagic Cameraの現時点のバージョン(V1.2)ではProRes 4K 60fpsの撮影で実用に供することは不可能です。

外付けSSDへ直接記録(ProRes系30fps)

フォーマットApple ProRes 422 HQApple ProRes 422Apple ProRes 422  LT
解像度4K4K4K
フレームレート30fps30fps30fps
ビット数最大12ビット最大12ビット最大12ビット
データレート(ビデオ)712Mビット/秒520Mビット/秒288Mビット/秒
カラーApple Log – HDRApple Log – HDRApple Log – HDR
エラー2回とも1時間録画で問題発生せず2回とも「不明なエラー」で停止で停止1回目は「不明なエラー」で停止
2回目はフレームドロップ発生で停止

ProRes 422 HQ 4K 30fpsではエラーは発生しなませんでしたが、ProRes 422とProRes 422 LTではフレームドロップあるいは「不明なエラー」が発生して停止しました。Blackmagic Cameraの現時点のバージョン(V1.2)ではProRes 4K 30fpsの撮影で実用に供することは不可能です。

外付けSSDへ直接記録(HEVC [H.265])

フォーマットHEVC (H.265)HEVC (H.265)
解像度4K4K
フレームレート60fps30fps
ビット数10ビット10ビット
データレート54Mビット/秒35Mビクセル/秒
カラーApple Log – HDRApple Log – HDR
状況1回目は高負荷のため停止
2回目も高負荷のため停止
2回とも1時間録画で問題発生せず

Blackmagic Cameraアプリの注意

連続撮影には注意

この検証では1時間連続撮影したのですが、うまくいっているケースでもiPhoneがかなり暖かい状態で繰り返すと高負荷となり停止することがありました。

数分程度のカットを断続的に撮影する場合は前述の結果でエラーにならない設定での撮影では問題ないですが、その問題の無い設定を30分とか1時間連続撮影することを繰り返すとエラーになる可能性がありますので気をつけましょう。長時間連続撮影したあとは必ずiPhoneが冷たくなるまで待つことです。

Blackmagic Cameraアプリでは、撮影中の背面に手を触れた感覚、あくまで主観的な感覚ですがProRes HQ < ProRes < ProRes LT < HEVC(H.265)と熱くなっている気がします。この順で圧縮率が高くなり、圧縮率が高いということはそれだけCPUの負荷も高くなり、ProRes HQ 4K 30fpsでは問題ないのに、HEVCでは全滅というのも温度上昇に関係している可能性があります。

外付けSSD直接録画は要ブラッシュアップ

Blackmagic Cameraアプリは2023年9月14日にV1.0がリリースされたばかりでまだ2ヶ月くらいしか経っていません。

それでもBlackmagic Design社のアプリということで期待感が高く世界中のクリエイターが取り上げてブログやYouTube動画で解説しています。2023年11月8日

特に4K 60fpsは全滅というのはいただけません。4K 60fpsのProRes 422やHEVCは内蔵アプリが対応していますので、Blackmagic Cameraアプリでできないという話はないはずです。ProResはまだしもHEVC 5K 60fpsで外部SSDで撮れないとなると問題です。

Blackmagic Cameraアプリでは内蔵ストレージだけにしておくほうが今の時点ではまだまだ安全です。特に大事な動画をBlackmagic Cameraアプリに任せるのはまだちょっと抵抗があります。

外付けSSD直接録画のまとめ

Blackmagic Cameraアプリで外付けSSDへの直接録画では、ProRes 4Kの場合60fpsでも30fpsでもランダムにフレームドロップが発生したり「不明なエラー」で停止するので使えません。

Blackmagic Cameraアプリの4K撮影で外部SSDへの直接1時間連続録画してエラーにならなかったのは筆者の検証した環境では、
・ProRes HQ 4K 30fps
だけした。

ただし数分以内のカットで30fpsであれば、iPhoneが熱々でない限りはどのフォーマットでも停止することはありませんでした。

Blackmagic Cameraアプリの4K撮影で外部SSDへの直接録画する場合、30fps以下のフレームレートで1カット長くても数分以内にすることが望ましい。そうでないとフレームドロップで停止などの恐れがある。

内蔵アプリではフレームドロップなどで停止しませんでした。しかしProResにせよHEVCにせよ4K撮影の場合は60fpsを避けて30fpsまでにとどめておくほうが無難でしょう。ちなみにProRes・4K・60fpsでは2時間連続撮影では1.3TBほどの容量になります。

Blackmagic Cameraアプリはとてもよくできた動画カメラアプリですが、外部SSDへの直接書き込みに関してはまだまだブラッシュアップが必要な部分があります。

本検証では外付けSSDへ直接記録する場合のみを検証しましたが、内蔵ストレージへの記録については検証していませんので特にBlackmagic Cameraアプリで内蔵ストレージで問題ないかどうかは不明ですのでご注意ください。



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